バカテスト・化学
(ライトノベル『バカとテストと召喚獣2』(第2巻)
pp.192-193)
第6問
ハーバー法と呼ばれる方法にてアンモニアを生成する場合、
用いられる材料は塩化アンモニウムと( )である。
<姫路瑞希の答え(模範解答?)>
水酸化カルシウム
<化学部部長の答え(模範解答!)>
その製法はハーバー法ではない
ため解答不能。
<解説>
塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混ぜて加熱すると、アンモニアが発生する
、というのは正しい。
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3(↑)
弱塩基遊離反応ですね。
ただし、これはハーバー・ボッシュ法ではない!!
アンモニアの実験室での製法の1つです!
センター試験でも出題される基本的な内容なのですが…。
ハーバー・ボッシュ法とは、鉄を主成分とした触媒を用いて、高温高圧の条件下で、
窒素と水素を直接反応させてアンモニアを作る、工業的製法
です。
N2
+ 3H2 2NH3
フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュにより確立された方法であることから、ハーバー・ボッシュ
法と呼ばれます。
簡単に言うと、
ハーバーが、実験室で水素と窒素からアンモニアを合成する実験に成功し、
ボッシュが、(ハーバー・ボッシュ法に必要不可欠な)高圧条件を工場で生み出す方法を開発し、工業化に成功した、
というわけです。
ハーバー法と呼ばれることも多いですが、やはり、ボッシュの功績がなければ、工業化には至らなかったわけですし、
ハーバー・ボッシュ法と覚えたいところです。
なお、これらの業績により、ハーバーは1918年に、ボッシュは1931年に、それぞれノーベル化学賞
を受賞しています。
高校化学の多くの教科書では、ハーバー・ボッシュ法の触媒は「四酸化三鉄」ということになっていますが、実際に触媒としての機能を持つのは「鉄」
である、というのも、まあ有名な話でしょう。
そして、ハーバー・ボッシュ法を題材とした問題では、必ずと言っていいほど
以下のような熱化学方程式が出てきて、
N2(g) + 3H2(g) =
2NH3(g) + 92.4 kJ
※
大学以降、および世界の高校化学では、以下のように書く。当然、化学オリンピックでも。
N2(g) + 3H2(g)
2NH3(g) , ΔH゜= -92.4 kJ mol-1
Hの添え字として、rを用いることもあるかもね。
(閑話?休題)
そして、熱力学方程式が出てきて、ハーバー・ボッシュ法におけるアンモニアの生成反応が発熱反応であることを示した上で、以下のように必ず質問されますね。
「アンモニアの生成効率を上げるためには、(ル・シャトリエの平衡移動の原理に則って考えれば)反応温度を下げるべきであると考えられるが、実際には、500℃前後の高温(←これを高温と考えるかどうかは人それぞれではあるが…)で合成が行われている。この理由を述べよ。」
簡潔にこの質問に答えるならば、
「温度が低いと(正反応の)反応速度が小さくなるから。」
でいいでしょう。
さて、そういうわけで、問題を以下のように修正すれば、問題に答えを出すことができますね。
<問題・修正版>
ハーバー法と呼ばれる方法にて
アンモニアを生成する場合、用いられる材料は塩化アンモニウムと( )である。
<答え>
アンモニアよりも強い塩基
(例) 水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、ナトリウムフェノキシド...etc
<解説>
この反応では、要は、弱塩基であるアンモニアを遊離させればいい
わけなので、
アンモニアよりも強い塩基を用いれば、OK
です。
まあ、もちろん変な副反応が起こってもらうと困るわけですが。
アンモニアよりも強い塩基といえば、
フェノキシドイオン(C6H5O-)や、水酸化物イオン(OH-)などがありますね。
したがって、以下のような反応でも、アンモニアは発生します。
ま、実験室でのお遊びですが。
(例1) 塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムを混ぜて加熱
NH4Cl + NaOH → NaCl + H2 O
+ NH3(↑)
(例2) 塩化アンモニウム水溶液とナトリウムフェノキシド水溶液の混合
NH4Cl
+ C6H5ONa → C6H5OH + NaCl +
NH3(↑)
また、今回は、塩化アンモニウムと何を反応させてアンモニアを得るか、という問題なので、
アンモニア塩として、塩化アンモニウムを用いましたが、
もちろん、硫酸アンモニウムなんかを用いてもOKでしょう。
ま、普通は、塩化アンモニウムを使うでしょうけどね。どこの実験室にも必ずあるはずですし。
<結論>
アンモニアの重要な工業的製法である「ハーバー・ボッシュ法」とは、
鉄を主成分とした触媒を用いて、高温高圧の条件のもと、
水素と窒素を直接反応させてアンモニアを作る画期的方法である。
N2 +
3H2
2NH3
(正反応は発熱反応。でも反応速度確保のため高温で行われる)
<出典>
バカとテストと召喚獣 2 (ファミ通文庫)
井上 堅二
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