No.006 炭素 - C - Carbon

「炭素:Carbon」は元素記号Cであらわされる典型元素で非金属です。

語源はラテン語で『炭=carbo』です。

周期表では14族に位置し、化学の一大分野である有機化学の根幹にある元素であり、われわれの体をはじめいたるところに炭素を含む化合物を見ることができます。
また、原子量は中性子数6の12Cを12.000としたものが基準として用いられています。


この項ではあえて有機化学的でではなく無機化学的な視点から炭素を紹介しましょう。

炭素の単体といえば多くの同素体を持つことが特徴の一つです。

正四面体型の「ダイヤモンド」
エンピツの芯にみられる層状の「グラファイト」
すすに見られる「無定形炭素」
近年発見されたサッカーボール型の「フラーレン」および「カーボンナノチューブ」

これらが代表的な同素体といえるでしょう。このうち最近注目されているのがフラーレンとカーボンナノチューブです。ここではフラーレンを紹介しましょう。


フラーレンとは炭素が60個、サッカーボール状に結合した球体の化合物です。
このサッカーボール構造をしたフラードームをデザインしたバックミンスター・フラー氏の名前から、フラーレンという名がつきました。別名としてはバックミンスターフラーレン、もしくはバッキーボールともいわれます。
現在はC60の他にもC80 のものが発見されており、この他の炭素数(70、74など)をもつものもごく少量ながら単離に成功しています。

ちなみにお値段は1 g当たりおよそ7万円程度のよう、やはり高いものです。


さてこのフラーレン、何に見えますか?
フラーレン
(Wikipediaより。)




…かごに見えますね!(強引


というわけで、中に”なにか”を入れたフラーレンが報告されています。”なにか”にあたるのは金属原子から驚くべきことにH2 まで入れられる様ですが、今のところ種類によっては入らない金属もあり、いまだその選択性は研究段階です。

しかしこの金属内包型フラーレン、カリウムやセシウムを内包(=ドープ)させるときわめてすぐれた有機超伝導体になることがわかっており、こちらもより応用的な研究がされている真っ最中です。

生成方法としてはフラーレン合成時に金属を混ぜとくとか、水素に至っては一度生成したフラーレンを切開して入れるという手法を使っています。




さて、このフラーレンについて、現在エイズ治療に用いられるのではないかという期待がされています。
HIVウィルス増殖に必要な酵素には隙間が開いているのですが、その隙間がまぁフラーレンがピッタリとのこと。
これを塞ぐことができればウィルス増殖を阻害できるそうです。


このプロジェクトにも課題はずいぶんありました。
まず、フラーレンが水にも有機溶媒にも溶解しないので、血液にもとけるよう親水基をくっつける化学修飾をしたり、こんどは酵素にくっつく側鎖を作ったり…
どうやら遂に実用化が近づいているようですが・・・

この例に限らず研究者は日々戦っているのです。

 

近年、有機化学や無機化学に限らず、さまざまな合成手法や解析技術が急速に進歩しています。それは当然新しい化学種の発見やその研究にもつながります。
最終的には日常生活等に役立つことが目標かもしれません、しかしそのためにはやはり「そもそも材料がどういったものなのか」を調べなければいけません。

それは基礎研究と呼ばれており、なじみのない人には白い目で見られることもある分野です。しかし、そういった研究なくして応用研究、さらには臨床研究はできません。
それは当然、技術の進歩に繋がることもありません。

技術大国日本、とよく言われますが、技術を持っているからこそ、基礎研究の大切さをもう少し理解してほしいと思う今日この頃です。


〈まとめ〉

基礎はだいじ。