■ 化学グランプリ一次選考 近年の動向
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<一次選考突破者の平均点等>
試 験 |
設 問 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
各点数 |
満点 |
一 次 選 考 |
最高点 |
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296 (99%) |
300点 |
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平均点 |
173 (58%) |
300点 |
193 (64%) |
300点 |
191 (64%) |
300点 |
158 (53%) |
300点 |
246 (82%) |
300点 |
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300点 |
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300点 |
最低点 |
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223 (74%) |
300点 |
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化学グランプリ一次突破平均点は04年〜06年は6割前後だったが、07年に難化し、08年にその反動(?)で易化。
しかし、きちんと学習していれば、平均点云々に関わらず、最低点は超えられる。
(上位80名が二次選考に進出、という相対評価だからね!)
…なんて当たり前のことを述べてみました。要は、難しいな、と思ってもあきらめずにやりましょう、ということ。君が難しいと思ったら、みんな出来てない。(裏返せば、簡単だと思ったら、みんな出来てるかも?)
さてさて、全国高校化学グランプリ2010の動向予測ですが、「全国高校化学グランプリ2009報告書」が公開されてから、ブログの方で行う予定です。
化学グランプリ2010でも、問題の分量、難易度は化学グランプリ2008、化学グランプリ2009と同程度とは思いますがね。
参考として、化学グランプリの公式報告書を付しておきます。どうも、公式の講評は、翌年分の作問担当者に向けて書かれたような(というか、実際にそうなのかもしれませんが、)感じで書かれているんですね。それによると…
<「全国高校化学グランプリ2008実施報告書」より>
「(高校)2年生の参加者比率が高くなったことは歓迎すべきことといえよう」
「今回の問題作成にあたって特に留意した点は問題の分量である。
これまで、全国高校化学グランプリでは高校教科書で取り扱われる内容を越えた問題を出す関係上、
問題文中に詳細な説明を加える必要があったため、分量が多くなりがちであった。
(中略)そこで今回は大問あたりの分量を減らし、参加者が考える時間を取れるよう配慮した」
「採点作業をより効率的に進められるよう、各設問で問う内容についても工夫した」
「問題が難しすぎて手も足も出せなかったというよりも、少しでも解答することができたという印象を参加者に
与える方が、参加者の満足度を高め、次回も参加したいという気持ちにつながるのではないだろうか。
また、本来、全国高校化学グランプリは化学の普及・啓蒙を目的としていることを考えれば、難問ばかりを並べるのはむしろ逆効果ともいえる」
「今回の一次選考の参加者アンケートからも、問題が簡単になったという印象を受けた参加者はごくわずかであり、
大半の参加者は問題を難しいと感じている。つまり、全体としての難易度が下がったとはいえないと思われる」
「今後も分量に配慮しつつ、知識や計算力のみではなく、思考力や応用力を問う問題を作成していく必要がある」
「全国高校化学グランプリは(中略)化学に興味を持つ日本の高校生に世界基準に化学の問題に挑んでもらい、
化学の面白さや奥深さ、重要性を学んでもらいたい」
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これを読む限りでは、問題の分量も難易度もそれほど変わらないことになりそうです。
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■ どう勉強したらいいか分かんねぇ 〜体系的対策〜
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基本的に、勉強はしなくても、設問は解けるように作ってあります。
「化学グランプリ」の問題を解くのに必要なのは、化学の知識というよりは、「論理的思考力」「発想力」「情報処理能力」といった感じです。
すなわち、適度に長い問題文や図表を見て、その内容を理解し、それを応用する力が求められているわけですね。
とはいえ、そんなことを言ってしまうと、このページの存在価値がなくなってしまってしまいますし(笑)、
やはり参加するからには、賞は取りたいですし、あわよくばパソコン、あわよくば化学オリンピックにも参加してみたいですよね?
というわけで、このセクションでは、体系的な学習対策について述べていきます。とはいえ、肩に力を入れて学習していく必要はありません。
学校や塾の息抜きとしてやっていけばいいのです。
【第0段階】
教科書…
私は、配布された日に中身を見ることなく、押し入れにしまい込み、結局一度も使うことなく、どこかへ行ってしまいました(笑)。
高校の教科書ほど配布する意味のないものはない。中学の教科書なんて尚更(ry
と、いうわけで、さっさと飛ばして、第1段階へGO!!
【第1段階】
まだ高校化学( 化学 I ・ II )を一通り終えてない方は、おそらく学校の副教材として手元にあるはずの
化学の写真集「化学図録(図説)」を一通り眺めてみることをオススメします。
やはり、人間の脳に強く訴えかけてくるのは映像ですからね。
ホントは自分で実験をしながら覚えていくのが一番いいのですが、そうもいきませんので。
<化学図録(図説)の例>
(他にも、『スクエア最新図説化学』などがあります。なぜか画像が出てこない…汗。)
暇なときにペラペラと眺めたり、化学の授業が退屈なときにペラペラと眺めたり、通学のバスや電車の中で取り出して読んでみたり、
気に入った写真や図をデジカメやケータイで接写撮影して、デスクトップの壁紙や待ち受け画面に設定したり、と色々使用法がありますね。
ただし、説明文が少ないという欠点ゆえ、ときに説明が不十分な点、もしくは、結果的に間違った変な説明になっていることもあるので注意が必要。
疑問をもった点は、後述する『化学I・IIの新研究』を参照してもらいたい。
【第2段階】
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化学T・Uの新研究
高校の授業から大学入試まで使える偉大な(笑)参考書。
高校化学において生じる、あらゆる「なぜ?」に対し、
真正面斜めやや右からじっくりと解決した本であり、
文章中から間違いをいくつ発見できるかによって、自分の「化学力」が分かる、というニュータイプの参考書である。
辞書として用いるのがよい、という意見もあるが、この本こそを教科書として、否、 大学入試までの(←ここ重要)化学の伴侶(笑)として扱うべきである。
ちなみに私は、中学の修学旅行のとき、この本を新幹線の中で熟読していたところ、マンガを読んでいると勘違いされて、
取り上げられたことがあります。(なにせ、やたら分厚いからね。もちろん、すぐに返してもらえたけどww もちろん、本ばかり読んでいたわけではない。
トランプに飽きたからである。)
さて、この本で特に重要なのは、本文ではない。
詳説である。 (間違いもあるので探してみよう! 中には、根本的な間違いも…。)
例題は基本問題並の易しい問題があるかと思えば、
某私大で出るような凶悪すぎる問題まで難易の差が極端であり、すぐに飛ばしてしまってかまわない。というか、読み飛ばせ!
そして、化学グランプリ一次突破を目指すならば、ぜひSCIENCE BOXを、興味を持ったとこだけでも読んでみてほしい。
そして、さらに興味が湧いてきたら、専門的な本を読んでみよう!
この本の弱点は、高校化学の視点からのみで、高校化学の疑問点をすべて解決し尽くそうとしている点である。
やはり、高校化学というのは、あの訳の分からない指導要領という範疇において囲まれた牢獄であり、すべての化学現象を解析できるはずはない。
にもかかわらず、高校生にも分かりやすく書かなければいけないがために、どうしても無理矢理こじつけな説明がなされている箇所もある……
……だから、この本には変な間違いがあるんだろう、と思っていた時期が私にもありました。
どうやら、この参考書の作者さんは、あまり…(禁則事項です) ようです。
しかし、この本がひとえにここまで人気なのは、
とにかくとにかく、雑多な事柄をかき集めて辞書風の本にしてしまったために、受験生にとっては、あたかも「バイブル」のように見えてしまう点。
(受験生は、こういう分厚い参考書を見ると、なんだかありがたく思ってしまうものだ。また、「東大」「京大」「医学部」などの文字にも弱い。)
高校化学と大学の化学が断絶されているがために、 この本で勉強した高校化学の知識は、大学に入ればポーン、とどこかに飛んでいってしまい、結局、「新研究はすばらしい参考書だった」という記憶のみが残ってしまう点。
そもそも、この本の間違いが、主に「詳説」の中に隠されており、(本文中にもあるが…)またこの本の内容量がとてつもなく多いため、高校生には間違いや誤植の発見が難しい点。
なぜか、高校の化学教師までもが新研究を推奨し、絶賛している点。 (間違いには気付かない)
高校生は、何かおかしいなぁ…と思っても、それを先生に確かめることができないため、結局新研究が正しいと思い込む点。
にあるでしょうかね。
しかし、卜部さんが、よくぞまあここまで分厚い化学の経典を作り上げたことに関しては、驚嘆するばかりですね。
この本は、「高校化学(笑)」の辞書としては、結構利用価値はあると思いますから、
要は、「参考書」に書いてあることがすべて正しいとは思わないこと!
これが大事です!
いろんな参考書を読んでいると、本によって、真逆の主張をしている、なんてこともあるので、楽しいですよ。
さてさて、 この本の間違いを3個以上発見した! 読んでもさらに疑問が湧いてくる… この本の説明法に疑問を感じるよ… もはやこの本じゃ物足りないな…
と感じたら、そろそろ第3段階へと移る時期ですね。
「ミスが見つからなかった…」 と落ち込む必要もありません。次の第3段階で紹介する3冊を読めば、きっと間違いが見つかります。
見つからないのなら、あなたは本の読みが浅い!
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【第3段階】
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高校で教わりたかった化学
目から鱗が落ちること必至。
日本の高校化学が、諸外国と比較して、いかに変なことをしているか、 「化学オリンピック」を目指す方々にはぜひ読んでもらいたい。
この本は、化学を学ぶ上での本質的な動機「なぜ?」を、もう一度、自分の手に取り戻すために必読の本であり、
高校化学を学ぶ上で生じるはずだった「なぜ?」について、分かりやすく解説されている。
全国高校化学グランプリでも、国際化学オリンピックでも、 結局は、「なぜ?」に対して、 自分でどれだけ考え、身につけてきたのかが問われるのである。
この本は、 この「なぜ?」の探求、基礎化学、理論化学(物理化学)版である。
高校化学と大学化学の“断絶”を痛烈に批判し、
「気体 1 mol は22.4 L」を「約 25
L(25℃・1atm)」で教えるべきだ、などと述べられているが、それならぜひ東京大学の入試で実施してほしい!
(著者は東大生産技術研究所の教授と講師!)
以下、目次を記しておく。
序章 見えない世界 1章 安定な元素はいくつ? 2章 周期表とはなんだろう? 3章 ナトリウムのイオンはNa+ なのに、なぜ窒素のイオンはNO3-
なのか? 4章 原子はなぜつながり合う? 5章 H2O分子は、なぜ「く」の字に曲がっている? 6章 モルとは何か? 7章 熱と温度はどうちがう? 8章 2H2 + O2 → 2H2Oの矢印は、なぜ右を向く? 9章 化学反応は、どのように進むのだろう? 10章 化学反応は、最後まで進みきるのか? 11章 水に溶けやすい物質と溶けにくい物質は、どうちがう? 12章 電池のパワーは、どこから出てくる? 13章 水を電気で分解するのに、なぜ硫酸などを溶かすのか? 14章 フェノールフタレインは、どうして赤くなる? 終章 教科書の記述は正しい…のか? |
このように、「化学の本質」に迫る内容が展開されているが、書かれている内容はそれほど難しくないので、すらすらと読めるであろう。
ちなみに、著者の渡辺正氏は、地球温暖化などの環境問題に関して、懐疑的な見方を貫いている人なので、そのことを前提とした上で、この本を読んでくださいね。 |


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Pragmatic Chemistry
「なぜ?」の探求、無機化学版と有機化学版である。
表紙で「化学オリンピックに対応する唯一の参考書」とも謳われている通り、これを読めば、少なくとも、無機、有機の土台となる知識に関しては、十分化学オリンピックを狙える位置につくことができる。
"Pragmatic"とは、意訳すれば「役に立つ」という意味であり、 その名の通り、我々の生活には、どれほど化学が根付いているのか、どれほど役に立っているのだろうかという視点でもって、この参考書は書かれている。
したがって、我々の生活に関わる多くのものが題材として取り上げられており、親しみを持てる、といったら変かもしれないが、とにかく、化学が身近なものとして感じられ、化学など自然科学を学ぶと、どんなに良いことがあるのかが分かる。
ただし、美味しいところだけを厳選して書かれているばかりに、結構重要なところや、面白いトピックでも、えらく簡単に書かれているので、読む際には、じっくりと腰を据えて読もう!
「化学I・IIの新研究」の間違いなんかも、さらりと書かれているので、注意して読まないと見逃す恐れも…。
さてさて、この本でちょっと厄介なのが、この本が電子書籍であって、 図書館には置いてない(そりゃそうだ)という点ですね。
まあ、おかげで、値段は1冊525円という破格の値段にまで下がっているので、文句は言えませんなぁ。
図や写真が、パソコン上ゆえに、カラーで見られるというのも、うれしいところですね。
購入は、Bitcashという電子マネーを使うことになります。
このBitcash、多少厄介ですが、クレジットカードや、コンビニではファミリーマートなら、1円単位で買うことができるようです。
なお、『Pragmatic
Chemistry 無機化学編』の表紙には、 「銀」の項目が、2009年の名古屋大学の入試問題に的中した! と書かれていますが、そりゃそうでしょうよ。
かつて、この参考書の著者である大東孝司氏から「化学」を学んだ生徒が、今、まさに大学の教授として活躍しているのだから。 |
さて、ここまで済ませれば、化学的背景の学習は万全でしょう。(十分すぎるぐらいだ。)
あとは、計算ミス等のケアレスミスを減らすよう努力したり、後述する小手先テクニック(?)をふんだんに活用して失点を防ぎ、化学グランプリでは、有利に戦いを進めましょう!
そして、化学グランプリ二次選考、さらには国際化学オリンピック日本代表候補へのキップを必ずつかみましょうね!
【第☆段階】
これらの本だけでも物足りない、もっと知りたいという知的好奇心あふれる方は、 自分の興味の湧いた分野の設問別対策の本(一部、重複あり)、 高3の方なら、 国際化学オリンピック代表候補生用参考書などを読んでみてもよいでしょう。
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■
とにかくめっちゃパソコン欲しいんですけど 〜失点を防ぐために〜
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○
取れるところからとる(基本)
まあ、当たり前ですが。 本番は何があるか分かりません。自分の解けるところから解いていきましょう。
化学グランプリ2008ぐらいまでの問題では、 各大問で、後に行くほど難しくなっていくのがセオリーでしたが、
化学グランプリ2009の問題は、途中に妙に簡単な問題も挟み込まれてる、という出題形式でした。
途中で詰まっても、次の大問に飛ばずに、解ける問題がないか探すのも有効かもしれません。
一つの問題で悩み続けるのは損です。
点数は、すべての問題にほぼ均等に与えられているようですから、時にはあきらめるのも大事ですね。
まず、問題冊子が配られたら、表紙をじーっと見つめてみてください。 なんか、1ページ目が透けて見えるような…。「ついに私も超能力に目覚めたのね…!!」
…ではなく、1ページが透かし読みできます(笑)
「大学への数学」の入試報告なんかを見ていると、必死になって透かし読みしている人のレポートがたくさん載っています。ハテサテ…?
まあ、透かし読みがしたい人は勝手にして下さい。 試験が始まるまで時間がありますしね。 でも、あくまでも「見えてない」んですよ、王様はきちんと服を着ていらっしゃるのです。皇帝もね。
ところで、センター試験でも透かし…(禁則事項です)
○ 単位に注意!
問題文の理解も完璧。計算も完璧。絶対に正解だ!
…と思っていたのに、単位に無頓着だったばっかりに、間違えてしまった、という経験はだれしもあるものではないでしょうか。
たとえば、化学グランプリ2008 第4問では、
問1 実験Aにおいて、電極aで起こる反応は式2
のみとする。以下の各問に文字式で答えなさい。 なお、ファラデー定数(電子1
molがもつ電気量の絶対値)はF [C mol-1 ]とする。
(3)血液試料中にもともと含まれていたグルコースの濃度[mol
L-1]
を求めなさい。 | という問題がありましたが、問題文中には、
[実験A] pH
を一定値にした一定量の電解液(緩衝液)を、半透膜で分けられた反応容器の左右両側に注ぎ、左側にのみグルコースオキシダーゼを溶解させ、さらに、少量の血液試料(体積
V [mL])を混合した。電極a
と電極b(いずれも白金電極)の間に適当な電圧をかけ、電極aと電極bで以下のような反応を進行させた。 | というように、濃度(1Lあたりのmol)を求める問題なのに、体積VはmLで与えられていました。
すなわち、計算過程で、mLをLに直す(V×10-3
[L]として代入する)必要があった、というわけです。
これに気付かずに、Vは[L]だと誤解して計算を進めてしまうと、減点を食らってしまう、 場合によっては×になってしまうかもしれません。
単位にはくれぐれも気をつけましょう!
毎年、必ず一問はこういう問題があるような気がします。
そして、逆に、単位を自在に操れるようになれば、 主に物理で登場する「ディメンション(次元)」の考え方を使うことで、 理解が中途半端でも、無理やり答えを組み立てることができるようになります。
○ 電卓の使い方に慣れよう!
電卓は参加賞として貰えるものなのに、その前に電卓に慣れよう! というのも変な話ですが、
特にメモリー機能は、大幅な時間短縮につながるので、ぜひともマスターしておきたいところです。 説明云々よりも、こういうのは、習うより慣れろ!です。
ちなみに、貰える電卓は、100円ショップで売ってそうな普通の電卓です。 ロガリズム(対数)機能はついてません。
ただし、高3の化学グランプリが終わった後に、なお電卓を使い続けていると…… 大変なことになりますよ…(ブラ○クホスピタル風に)
○ 数学、物理も少しは知っておこう!
数学は、指数・対数の基本は最低限知っておきましょう。
指数は、先程取り上げた、[mol L-1] の
L-1(1/L <L分の1> を表す)で出現 対数は、pHとかpKa
(←pKa ぴかちゅ(自主規制)
は、化学オリンピック準備問題以降) で出現
したりなんかしますね。
対数に関しては、pHの計算が問われることがあるかもしれないので、 簡単な計算ぐらいは出来るようになっていた方がいいでしょう。
まあ、化学の問題集にあるようなレベルだけで十分です。
物理も「力のつりあい」と、単位の変換ぐらいは触れておいた方がいいでしょうね。
特に、ディメンション(次元)の概念は知っておいて損はありません。
ところで、化学グランプリに限らず、化学の世界では、 「log 2」と言えば、それは「常用対数」(底が10の対数)を指します。
すなわち、「log 2」=「log10 2」のことです。
(受験化学はこの限りではない=受験化学は「化学」ではない!)
ところが、数学という科目では、 「log
2」と言えば、それは「自然対数」(底がeの対数)を指します。
すなわち、「log 2」=「loge
2」のことです。
一方、化学では自然対数は、「ln」で表します。
つまり、「ln 2」=「loge
2」というわけですね。
化学で自然対数が初めて出現するのは、反応速度のあたりかなぁ。 人によっては、大学受験前に出会うかもしれませんね。
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■
得意分野で点を確保したいな 〜設問別対策〜 |
↓A本風(?)、傾向と対策(笑)
年度 |
番号 |
項目 |
内容 |
難易度 |
2008 |
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕 |
基礎
有機
無機
物理 |
フロギストン説、ドルトンの原子説、倍数比例の法則、 酸・塩基(ブレンステッド・ローリーの定義、ルイスの定義) 構造異性体、シス-トランス異性体(幾何異性体)、エナンチオマー(光学異性体)、 ジアステレオマー、キラル、ノット、トポロジー 硫酸銀(I)・硫化銀(I)の熱分解、テレフタル酸銅(II)の結晶構造、 銅(II)イオンの配位子の決定、金属-有機系構造体、気体の貯蔵(気体の分圧) 血液中のグルコース濃度の測定法(酵素:グルコースオキシターゼ)についての考察、 反応速度論の導入 |
やや易
やや易
標準
易 |
2007 |
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕 |
基礎
有機
無機・有機
物理 |
環境問題(地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨)、ボイルの法則、 トリチェリの真空実験、地下水のくみ上げ、流れ出る流体の圧力(ベルヌーイの定理) ラジカル反応、イオン反応、エト-ケノール平衡、アルドール反応、 フルクトースの生合成、トロピノンの生合成(反応機構) 界面活性剤、臨界ミセル濃度、硬水の軟化、硬水中でのセッケンの加水分解、 逆性セッケン、逆ミセル エンタルピー、エントロピー、ギブズエネルギー、難溶性塩の溶解度積、 水性ガスシフト反応、金属精錬(エリンガム図) |
やや易
やや難
標準
難 |
2006 |
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕 |
基礎
有機
無機
物理 |
環境問題(地球温暖化?、オゾン層の破壊←ランベルト-ベールの法則)、 レイリー卿による「大気窒素」からの「未知気体」の分離実験 共役ポリエンの吸収極大波長、HOMO・LUMO、共役二重結合、ポリアセン、 ステロイドの吸収極大波長(Woodward-Fieser則)、とある感圧色素の構造推測 ルブラン法による炭酸ナトリウムの合成、イオンセンサ、クラウンエーテル、 イオン選択性、膜電位、片対数グラフの利用 コールラウシュのイオン独立移動の法則、水酸化ナトリウム水溶液の電解、 モル伝導率、弱電解質の電離平衡、難溶性塩の溶解度・溶解度積、伝導率滴定 |
標準
標準
やや易
やや難 |
■ 傾向
□
○ 出題形式は?
<問題構成> 例年大問4題。各大問がさらに2、3のパートで構成されていることもある。〔1〕が基礎化学、〔2〕が有機化学、〔3〕が無機化学、〔4〕が物理化学に関する問題となっている。
<解答形式> 4題を150分で解く。解答は問題ごとに指定の解答用紙の所定欄に記入。つまり、解答欄がある、ということ。某国立大学のように、横罫線が引かれただけの解答用紙だったり、某私立大学のように、最初の方の問題だけがマーク式になっていたり、某学園(高校)のように、テストの点数に上限がないわけでもありません。(←解答用紙はどうなってるんだろう? 解答用紙に解答欄があったから、解答用紙の数が有限なら、テストの点数に上限があることになりそうだが…)
また、計算問題は途中計算式を書かせることはあまりない。答えだけを記入する形式となってしまうので、計算ミス(≒電卓の打ち間違い or 有効数字ミス or 単位ミス)には注意したい。
<解答用紙> B4サイズの片面×4枚。
「全国高校化学グランプリ・過去問のページ」を参照。
一覧にしておいたので、どんどんダウンロードしましょう!
○ 難易度は?
「全国高校化学グランプリ・選抜データ」のページを参照。
一次選考突破ボーダーラインなどの情報をまとめています。
■ 対策 □
≪第1問 基礎化学≫ 第1問は比較的簡単な問題が多いので、ここで点数を稼ぎたい。 近年は、「環境問題」、「化学史」がテーマの一つになることが多い。
渡辺正氏(化学オリンピック日本委員会副委員長)は 「酸性雨は存在しない」、「地球温暖化は嘘っぱちだ」などと言っておられますが(笑)。
「環境問題」系の問題は、誘導に乗れば解けるようになっているが、 とりあえず化学T・Uの新研究 の環境問題に関する「SCIENCE BOX」の項 (オゾン層破壊→p.347、酸性雨→p.357・361、地球温暖化→p.375)などは一読しておくといいかな。
ホントはちゃんとした本を読んでほしいけど。
「化学史」系の問題に関しては、 余裕があれば、以下に示すような化学史に関する本を一冊読んで、 化学の全体像を歴史的な視点から捉え直すとよいでしょう。
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高校からの化学入門シリーズ
第1巻 なぜ原子はつながるのか
第1章 「化学のはじまり」 第2章 「なぜ原子はつながるか」 第3章 「化学結合の理論」 第4章 「強い結合と弱い結合」 第5章 「分子を超える分子」
国際化学オリンピック候補生の学習用参考図書(2008年)
タイトルがいいですね。「なぜ原子はつながるのか」。
このシリーズは、高校生にも十分理解できるように、大学の化学のつまみぐいが出来るようになっています。いわば、大学の化学への橋渡しというわけですね。
さて、それにしても、どうも、化学グランプリの問題はこの本を参考にして作られていた?ような感じがしますね。この本を読んでみると分かりますが、化学グランプリ過去問で取り扱われたテーマが、ずいぶんと多く文中に出てきます。
…ま、真偽のほどは作問した先生方にしか分かりませんが。
第1章「化学のはじまり」から始まり、近代化学が成立するまでの簡単な化学史が語られます。
「定比例の法則」とか「倍数比例の法則」といった怪しい名前の法則とか習ったけど、よくその意味が分かんない、という方は一見の価値あり! です。 化学史的観点から見つめ直してみましょう。
また、本書のメインテーマは「結合」、すなわち「なぜ原子はつながるのか」です。この説明のため、古典量子論や分子の混成軌道についても軽く触れられています。
そして、最終章では、クラウンエーテルやシクロデキストリン誘導体などの超分子化学についての興味深いトピックスについても紹介されています。
この本は、どちらかというと、第2〜4巻へと続く基礎、土台という位置づけで書かれているので、さらっと楽しみながら読める本です。
このシリーズは、あくまでも大学への「入門書」であるため、個々のトピックについて、それほど深く述べてあるわけではなく、化学の全体像を「広く」「浅く」捉えた本です。(有機化学に関してはその限りではないが)しかし、高校化学の視点からの脱却という点で非常に意味のあるものになるでしょう。
ところで、お気付きの通り、 高校で教わりたかった化学 を 先に読んでしまった方は、批判精神を内包しつつ、この本を読むことになりますね(笑)。 |
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痛快化学史
最近読んだ化学史の本の中で、一番面白かった本。
まさに、「くわしい説明をたっぷり添えた絵本」、「学史の名所をめぐる気楽なツアーに読者をお連れしたい」との言葉通り。
注目は、なんといっても図(絵)の多さであり、 当時に描かれた実験風景や実験器具などの絵が挿絵としてふんだんに用いられており、見ているだけでも楽しい。
この本は、化学のそもそもの源である、実用科学・医術・魔術(錬金術) (途中で何を間違えたのか、「魔法学」ではなく「化学」になってしまった!)
に触れた後、化学が近代科学へと発展してきた道が、たくさんの絵と解説をもとに語られている。
その時代を生きる偉大な化学者たちが、現代の我々が「常識」と思っていることをそうとは思っていなかったこと、
例えば、ボイルもニュートンも錬金術に必死だったこと、 フロギストンを葬ったラヴォアジエが「カロリック(熱素)」を元素と見ていたこと、 1860年ごろまでは水の分子をHOと書いていたこと (↑化学グランプリ2008でも出ましたね)
も興味深い。 |
≪第2問 有機化学≫ 第2問は有機化学の問題であるが、 問題文をきちんと読めば、有機をまだ習っていなくても解けるように作ってある。
まだ習っていない人は、とりあえず、化学図録をパラパラと読んでみよう。
化学I・IIの新研究 は……、見なかったことにしましょう。
致命的な間違いが有機には…。
やはりここは、
Pragmatic Chemistry 有機編
を読むべきですね。
ただし、電子の軌道とかの話は(2010年1月1日現在)割愛されているので、他の本で読んでおきましょう。 しかし、この本に登場する「等電子的(isoelectronic)」という考え方には目から鱗です。 様々な有機反応をいとも簡単に説明することができます。
また、各種アミノ酸に強塩基を滴下していく際のpH変化の図を始めとして、所々に著者、大東氏のこだわりが見てとれます。見落とさないように!
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亀田講義ナマ中継 有機化学
代ゼミのカリスマ講師(←?)と天才ネコの、マンツーマン有機化学講義。
講義は超個性的ではあるが、 まさに「マンガとギャグと化学の真髄の奇跡のコラボレーション」である。
「有機化学ってにゃんだ?」なんて言っていたと思ったら、 いつの間にか、クライゼン縮合まで理解できてしまうという、 とてつもない本である。
内容にはちょーーっと怪しいところもあるが、もともと分かりやすさを前提にした本だろうから、目をつぶろう。
有機化学が苦手な人には読みやすいかも。
|
≪第3問 無機化学≫ ここも、できるだけ得点源にしたい問題。
見たことのない化学反応でも、化学反応式は無理やり立てられるようにしておこう!
計算問題がけっこう出現する。 設問の意図を把握し、的確に立式できるかが、勝負のポイントとなる。
グラフの読み取りなんかも頻出。まあそれは無機化学に限ったことではないが。
問題文をよく読み、誘導に従って解いていけば、基本、解けるはずであるが、 理論化学や有機化学方面の知識が必要になることもあるので、ちょっと厄介な大問だ。
無機の対策としては、化学I・IIの新研究 の第4章(他の章よりも比較的間違いが少ない)や、 化学図録を眺めるなどの方法があるが、なんといっても、
Pragmatic Chemistry 無機編
を読んでほしいですね。
他の参考書には書いてないことだらけです!
大東氏独特の辛口な批評から始まり、独自の視点、豊富な化学経験を分かりやすく簡潔につづったこの本は、何度読んでも飽きませんね。
図や写真がカラーというのもうれしいですね。 「海水」の項目中にある図は、実際こんな色をしているんですよ。 ぜひ写真も見てみたいですね。
一方、Pragmatic
Chemistryに載っていない他の元素についても知りたいという人は、
≪第4問 物理化学≫
毎年、一番の難問で、そもそも、ここにたどり着くまでに時間不足に陥る人が多く、 捨て問とも言われていた第4問ですが、
化学グランプリ2008で突如易化し、化学グランプリ2009で少し難化したものの、 それでも昔ほどは難しくなく、問題文をきちんと理解し、誘導にちゃんと乗り切れれば、 完答も十分可能な問題です。
対策としては、 まあ、化学平衡の概念は知っておいて損はないでしょう。
参考書としては、うーん、化学I・IIの新研究 の第2、3章、
高校からの化学入門シリーズ 第3巻 化学反応のしくみ
なんかかな…?
この分野に関しては、あんま面白くないけど、 高校受験化学における「理論化学」の分野を、もう見れば吐き気がするような 面白くもなんともない大学受験用の化学(笑)問題集を使って演習するのが、
大学受験化学の対策にもなって一石二鳥(笑)かもしれないですね…。
うーん、Pragmatic
Chemistryの理論編(状態編・反応編)が待たれるところです。
大学教養課程レベルの参考書は、(高校化学との断絶が発生するために)かなり難しいですが、
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■ 分子模型って、ぶっちゃけ必要なの? |
もしあなたが教科書やパソコン画面を眺めているだけで、立体異性体が手に取るように分かるならば、分子模型は不要でしょうが…?
最初の方は余裕でも、だんだん分からなくなってくるでしょうし、レゴ好き、模型好き、その他小物好きにはたまらない一品でしょうよ。
パソコンの全盛においても、「分子模型」というものが存在していることを考えれば、その存在意義は自ずと明らかになりますね。
よく有機の問題で見かける「同一平面上に炭素原子をすべておくことができるのはどれ?」
みたいな問題が苦手、という人は、おそらく分子模型でちゃんと遊んでない人たちです!
所詮、二次元的虚像世界を三次元的現実世界に具現化するのは不可能なんだよ!!!!!
いや、失礼。ちょっと興奮してしまいましたね。
え、違う? 二次元的現実世界を三次元的虚像世界に具現化するのは不可能、ですか。ああ、そうですね。これは失礼いたしました。
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よくある質問 立体化学入門
立体化学の教科書。
これを参考に、分子模型を組むと、立体化学がよく分かる。
いわゆる「不斉炭素原子」のない光学異性体も多数紹介されている。
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HGS 分子構造模型 D型セット
結晶格子用。
自分は、結晶が大の苦手だ、という人、
結晶構造が、平面図では、どうなっているか訳が分からない、という人に。
セン亜鉛鉱型構造も、ダイヤモンドの構造もバッチリ! あの一番外側の立方体型のボンド群がないと、結晶をイメージできない人へ。
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DVD‐ROM付 パソコンで見る動く分子事典 Vista対応版 〜 分子の三次元構造が見える・わかる
メタンから始まり、tRNAといった生体高分子まで収録した「分子事典」である。 ちなみに、『魔法事典 』なんてものもamazonでは売っている。
「基本分子」、「アミノ酸・糖」、「天然成分」、「話題のくすり」、「健康食品・サプリ」などの項目に分かれており、大半は聞いたこともない分子であるが、その中に、コレステロール、カプサイシン、CoQ10(こえんざいむきゅ→てん)などよく耳にする分子もあり、思わずニヤリとしてしまう。
それだけではなく、DVD-ROMが付属されており、約3000の分子の3D画像を見ることができる。
この画像は、回転したり、拡大したり…とまあいろいろなことができ、分子模型を組み立てるのが面倒くさい、眺めるだけでよいという人には特にオススメである。
分子模型を組み立てるのが好きな人でも、分子模型で作るのは到底不可能な、イオンチャネルやGFPなどの超高分子も見ることができる上、立体配置等で迷ったときの「解答」として利用することもできる。
「Windows 7 対応版」なんてのが出たりして(笑)
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つまり、一次選考突破のためには…
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を辞書代わり(笑)に用いて、あらかたの「高校受験化学」を勉強した上で、
・ ・ 
を読んで、「高校受験化学」から脱却し、視野を広げる。
過去問は、化学グランプリ2008、化学グランプリ2009ぐらいを解いておく。
まあ、こんな感じかな。
あとは、ケアレスミスのないように気をつけろ〜〜〜!
ちなみに、ここまででは触れてこなかったが、Newton などを購読するのも面白い。
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国際化学オリンピック代表候補生用 参考書群
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詳しくは、化学オリンピック・金メダルへの参考書(準備中)を参照。
<参考書一覧>
国際化学オリンピック代表候補生用 学習参考書群
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■ あんまり参考にならない参考書群(笑)
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元素周期 萌えて覚える化学の基本
以前、Chemquiryでは、Chemquiryのマスコットキャラクター(イメージキャラクター)を誕生させようという動きがあった。今ではどうなったのか分からないが、その会議(?)の場には、どうせなら、すべての元素(のマスコットキャラ)を登場させよう、なんておどけた発言もあった。
だが、世の中は広い。 全元素(この本では、どちらかというと単体としての性質か?)の擬人化という とんでもないことをやってのけるヤツらはいたのである。
しかし、どうせやるなら、もう少しマシな説明文を加えてほしいものだ。 内容は、無茶苦茶で、ありえないミスも散見される。
そこで、はたと気付いたのだ!
そう、これは単なる萌えイラスト集であって、化学の参考書ではなかったのだ!
それなら化学の専門書のコーナーに置くなよ、 と書店の店員に文句を言っても始まらなかったわけだが。
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