バカテスト・化学
(ライトノベル『バカとテストと召喚獣』(第1巻)
pp.6-7)
(および、↑の原作を元にした、アニメ『バカとテストと召喚獣』第3問(第3話)のアイキャッチ)
第1問
調理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。
この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いられるべき金属合金の例を一つ上げなさい。
<姫路瑞希の答え(模範解答?)>
問題点…
マグネシウムは火にかけると激しく反応する為危険であるという点。
合金の例…
ジュラルミン
<姫路瑞希の別解(アニメ)>
問題点……マグネシウムは炎にかけると激しく酸素と反応するため危険であるという点。
合金例……ジュラルミン
<化学部部長の答え(模範解答!)>
問題点… 家が消えてなくなる点。
合金の例…
ステンレス
問題点の方はいいとしても、合金例は「ジュラルミン」じゃダメだって!!
<解説…>
はぁ…、マグネシウムで鍋ねぇ…。
まず、マグネシウムを作るだけで一苦労だ。
マグネシウムは、主にマグネシウムイオンの形で海水中に多く存在します。
したがって、このマグネシウムイオンを還元してマグネシウムを取り出さなくてはなりません。
ですが、イオン化傾向のかなり大きな金属ですから、簡単にはマグネシウムにはなってくれません…。
<金属のイオン化傾向>
イオン化傾向とは?
簡単だ。 ←―
にいくほど、イオンになりやすい(=単体でいるよりもイオンでいる方が安定な)金属、ということ。
中学や高校で習う金属のイオン化傾向(イオン化列)は、
K Ca Na Mg
Al Zn Fe Ni Sn Pb (H2) Cu Hg Pt Au
←イオンの方が安定 単体の方が安定→
ですね。いろんな語呂合わせで覚えたことでしょう。
一番有名なのは、
K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb (H2) Cu Hg Pt Au
か
(そう) か な ま あ あ て に すん な ひ ど すぎ
借 金
ただ、これだと「借金」の部分が微妙なので、私は「PTA」
で覚えてました。
「PTA」って「ひどい」
ですよね。
「PTA」なんてつぶれてしまえばいいのにうわ何をするんdあqwせdrftgyふじこlp;@:「」
〜〜〜〜〜
さあ、マグネシウムは、かなりイオン化傾向の大きな金属ですから、 水溶液を電気分解するだけでは単体を取り出すことができません。
そこで、「溶融塩電解」
という手法が使われますね。
塩化マグネシウムを例にとると、 海水から取り出した塩化マグネシウムを融解させた状態で、電気分解
を行うわけです。
溶けて融解した塩の電気分解で、略して「溶融塩電解」。
何? 「融解塩電解」?
この場合は「溶融塩電解」の方がより正しいと思いますけどね。
模試では×になるのかなぁ…?
まあ、そんなときは、抗議すればいいですね。
さてさて、溶融塩電解によって取り出せたマグネシウムを頑張って成型して、マグネシウムの鍋ができた、としましょう。
ところで、マグネシウムは削りクズなど、
クズ状で表面積の広いものは大変燃えやすいことで有名ですが、
鍋に加工されたマグネシウムは、クズ状はないとはいえ、
さすがに下からガンガンあぶってたら、火ぐらいはつきそうですね。
火が付いたら…?
マグネシウム火災
だ!!
ホワイトバランスが崩れるほどの白い光
をあげて燃えるよ!!
皆さんは、中学か高校で、マグネシウムリボンがまばゆい光をあげて燃える様子を見たことがあることでしょう。
さあ、鍋が今にも消えようとしているどころか、家自体が消えようとしています!!
火を消さないと!
水をかける?
とんでもない!!
Mg + H2O → MgO + H2
の反応により、むしろ水素に引火して大爆発!!
どうしよう? じゃあ二酸化炭素
でどうだ!
Mg
+ CO2 → 2MgO +
C
黒煙をあげて燃え続けています!!
ならば窒素
なら…!
3Mg
+ N2 → Mg3N2
あれあれ……。
窒素も還元されてしまいました…。
マグネシウムは一度燃え上がってしまうと、特殊な消火薬剤を使わないと鎮火できません…。
そんな金属を使って、ましてや鍋にしてわざわざ火を当てるなんてありえない
よ!
じゃあIHを使えばいい?
うーん、ちょっと電気抵抗が足りない
かな。
じゃあ、IHの電流をアップさせればいい?
ん? でもちょっと待って!
マグネシウムって熱水と反応するよね!!
Mg + H2O → MgO + H2
マグネシウム鍋でお湯を沸かしていたら、水素が発生
してくるのか!
すごいね!
そして、酸化マグネシウム!
アルマイト加工のように、うまくマグネシウム表面に緻密な酸化被膜を形成し…、というようになってくれればいいのですが、
そんなに上手くはいかないでしょう。
どんどんマグネシウムが削られていって、鍋が消滅
しちゃいますね。
もし、なんとか上手くいったとしても、酸化マグネシウムは酸によく溶けます。
料理には使えませんね。
そんなわけで、マグネシウムは鍋には使えません!!
さてさて、マグネシウムの代わりに使うべき合金の例ですが、
姫路さんの答えでは、「ジュラルミン」となってますね。
でも、ジュラルミン製の鍋って見た事ありますか?
ないよね。
実は、ジュラルミンは、水、その中でも海水に対する耐食性が低いことで有名です。
海水ダメってことは、つまり水分、塩分に対して弱いってことだぁ!
純アルミの方が耐食性に優れているわけですね。
一般に売られているアルミ鍋というものは、ジュラルミンよりもアルミの純度が高いものなのです。
そういうわけで、ジュラルミン鍋は、料理しているうちに、どんどん腐食していくことになりますね。
とても使えませんっ!!
というわけで、鍋として使われている有名な合金
といえば、
重いけど、ステンレス
と言わざるをえないですね。
ステンレスは、鉄、クロム、ニッケル等の合金
です。
耐食性が高いので、鍋として使えますねっ!
ところで、姫路さんに対する「教師のコメント」として、
「合金なので『鉄』
では駄目としう引っ掛け問題なのですが、姫路さんは引っかかりませんでしたね」
とあります。
しかし、「鉄」と答えても、あながち間違いではないような気はします。
まあ×は×でしょうけど。
化学的には、「鉄」と言えば、純粋な“Fe”を指しますが、
一般的には、不純物として炭素を含んだ鉄、すなわち、鉄と炭素の合金「鋼」のことを指しますね。
一般社会で「鉄鍋」といえば、「鋼鍋」のことを指しますが、
まあこれは化学の試験なので、「鉄」ではなく、ちゃんと「鋼」と答えるべきでしょうかね。
<結論>
マグネシウムの燃焼の様子は、(ホワイトバランスが崩れるため、)写真に撮りにくい。
けど、ケータイのフレームに使われてることが多いので、家で手軽に燃焼実験ができるね。
でも、安全面は自己責任で! かなり危ないよ!
<出典>
1.原作ラノベ
2.アニメ
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