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〜〜はじめに〜〜 

 

  1.有機化学とは?

  有機化学とは、炭素(C)を主軸とする化合物群である、有機化合物を扱う学問のことです。歴史的に見ると比較的新しい分野であり、近年においてその発展は極めて著しいものとなりました。
1990年に1000万種類以上確認されていた有機化合物は、2000年には2000万種類以上、2005年には7000万種類以上にまで増加しました。
  
有機化学は、身の回りの様々なものに見られ、生体反応にも深く関わっています。有機化学無くしては、日常生活を営むことも儘ならず、生命さえも成り立たないのです。例えば、生命にとって重要な物質である、タンパク質やそれを構成するアミノ酸、また炭水化物、脂質、あるいはDNA(デオキシリボ核酸)などは、全て有機化合物ですし、ポリエチレンやポロプロピレンなどのプラスチックも有機化合物です。
  身近な所から最先端の研究室まで、様々な所で見受けられる有機化学。有機化学の部屋で、そんな有機化学に少しでも触れてみましょう。



2.有機化合物とは?

  有機化合物とは、炭素を主軸とする化合物群のことであり、炭素の他にも水素(H)酸素(O)窒素(N)を主に含み、その他にも硫黄(S)リン(P)、あるいはフッ素(F)塩素(Cl)臭素(Br)ヨウ素(I)といったハロゲン、中にはケイ素(Si) を含んでいるものや、金属を含む有機金属化合物もあります。
  ただし、炭素の化合物と言っても、二酸化炭素(CO)や一酸化炭素(CO)、炭酸(HCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、そしてシアン化水素(HCN)やシアン化カリウム(KCN)等のシアン化合物、二硫化炭素(CS)や、カーバイド(CaC)等の炭化物、その他にもシアン酸塩やチオシアン酸塩等は、有機化合物ではなく無機化合物であり、炭素単体(C)も化合物ではないので無機物質です。
  有機化合物を構成する元素は、種類こそ少ないのですが、炭素原子が4つの結合の腕、つまり原子価を持ち、炭素原子同士が多数結合することが出来るので、組み合わせによって様々な化合物を作り出すことが可能なのです。酸素の場合、酸素原子同士が4個以上結合した単体および化合物は知られておらず、酸素原子3個から成るオゾン(O)は不安定で分解してしまいますし、窒素の場合、窒素原子が3個結合したアジ化ナトリウム(NaN)などのアジ化物や、窒素原子が4,5個結合した化合物が知られているものの、それらは非常に不安定で、中には爆発性を示すものもあります。また、硫黄原子は多数繋がってスルフィド鎖を形成出来ますが、硫黄原子には原子価が2でしかありません。7000万種類以上という有機化合物の多様性は、ひとえに炭素の結合性の豊富さから来ているのです。
  有機化合物の特徴としては、共有結合で出来た分子から成るため一般的に沸点が低く、熱に対して不安定で、燃焼したり分解したりしやすく、非電解質(イオンになりにくい)で水への溶解度が低いものが多いが、有機溶媒には溶けやすい、といったことが挙げられます。




3.有機化学の歴史〜有機化学の曙〜

  有機化合物は、古来より確認されており、1700年代半ば頃に錬金術師たちが鉱物由来の物質と生物由来の物質との間に説明し難い違いが存在することを認めて以来、有機化学として扱われてきました。しかし、合成が容易でなく単離や精製が困難で、その分解しやすい性質のため、研究がなかなか進みませんでした。当時の化学者の多くは、有機化合物を合成するには生命の助けが必要である、という「生気説」を信じていました。
  しかし、1828年、ドイツのウェーラー(フリードリヒ・ウェーラー1800-82)によって、尿の中に確認される有機化合物である尿素(HNCONH)が、無機化合物であるシアン酸アンモニウム(NHOCN)から合成されて以来、有機化学の研究が盛んになっていきました。1843〜45にかけて、ドイツのコルベ(アドルフ・ウィルヘルム・ヘルマン・コルベ1818-84)は、幾つかの段階を経て無機化合物である二硫化炭素(CS)を有機化合物である酢酸(CHCOOH)に変換することに成功しました。そして、多種多様で混沌とした有機化学をはっきりとさせるため、1858年、ドイツのケクレ(フリードリヒ・アウグスト・ケクレ・フォン・シュトラードニッツ1829-96)とイギリスのクーパー(アーチボルド・スコット・クーパー1831-92)が原子価の考え方を発表し、炭素原子の原子価を4であるとしました。この後、ケクレは1865年、有機化学の代名詞とも言われるベンゼン(C)の構造を解明し、当時では有機化学はこれ以上発展しないだろう、と言われた程でした。




 
コラム:ページの有機化合物

尿素(urea)
NCONH

 

系統名:carbamide
分子式:CH
分子量:60.06
性状:無色結晶
融点:132.7℃

  1828年、ドイツのフリードリヒ・ウェーラーが、人間の手によって初めて無機化合物のみから合成した、歴史的に見て重要な意味を持つ有機化合物。次にそのシアン酸アンモニウム(NHOCN)を尿素に変換する化学反応式を示す。(ウェーラー合成法と呼ばれる)

 NHOCN → NHCONH

  炭酸(HCO)のジアミド
(アミドはR‐C(=O)NH‐R'(RおよびR'は炭化水素基または水素)の構造を持つ)で、無色無臭の結晶である。毒性が低く水に可溶のため、哺乳類や両生類は、体内でタンパク質が分解されて発生した有害なアンモニア(NH)を、尿素回路(オルニチン回路)によって尿素に合成し尿中に排泄する。(魚類ではアンモニア、鳥類や爬虫類では尿酸(C5H4N4O3)の形で排泄)次に全体反応を示す。(実際の反応機構はさらに複雑である)

 2NH + CO → NHCONH + H

  人の排泄量は、50g/day程度になる。
(→30g/dayとする記述もある)窒素源として肥料となる他、保湿効果が高いため化粧品等に利用されたり、ホルムアルデヒド(HCHO)と混合することで尿素樹脂(ユリア樹脂)の原料となったりする。また、自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物の分解にも使用される。胃潰瘍の原因菌であり、近年注目を集めているヘリコバクター・ピロリは、尿素を分解して発生したアンモニアを利用して胃酸を中和することで、強酸性の胃の中で生き延びていられるのである。





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