Location:  Home > 挑戦!化学グランプリ! > 1次(筆記) > 有機金属化合物を利用したポリアレーン生成反応


ブログからの続きです。  


問4 グリニャール試薬の有名反応 (やや易)

(1)グリニャール試薬を用いたカルボン酸の合成

グリニャール試薬によるカルボン酸の合成法

さて、反応は上図のようになります。

手書きの方がなんとなく落ち着くので。 ChemDraw? まだ持ってないですね。

水素原子は省略しています。

二酸化炭素は無極性分子ですが、個別の結合には電荷の偏りがあり、
そこをグリニャール試薬が見逃すはずがないわけです!

そしてこの問題の答えは、なんと示性式で答えるんですね!

間違えて構造式で答えないようにしてください!



(2)グリニャール試薬を用いたトランスメタル化反応

グリニャール試薬を用いたトランスメタル化反応

今回はどこがδ+ なのかなー、と思いきや、+ そのものの登場です!

というわけで堂々と攻撃してあげてくださいね!

さて、図では、MgBrCl も示していますが、答案用紙には書いてはいけません!

なぜなら、問題に、
『次の反応から得られる炭化水素基をもつ生成物A〜Dの示性式を……予想しなさい』

と書かれているからです!

ほとんど有機反応においては、目的とする化合物ではない、おまけの化合物が得られます。

しばしばそれは目的とする化合物の収率を超えます(爆)

そんなおまけをいちいち気にしてられないのが有機の世界ですね!

まあ、たまにおまけが有益である場合もあるにはあるのですが。



(3)もし水が重水(D2O)だったら――グリニャール試薬を用いたアルカン等への重水素の導入反応

グリニャール試薬と水の反応

水分子も分極しておりますゆえ、グリニャール試薬の餌食となるのじゃー

プロトン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に電離したものとして考えても結果は同じになります。



問5 グリニャール試薬によるエチレンオキシドの開環 (やや易)

グリニャール試薬によるエチレンオキシドの開環


親切にも、a の炭素が攻撃されると予告されているのですから、
素直にグリニャール試薬に攻撃させてあげましょう。

実際には、b の炭素の周りには、メチルな守護者が2人もいるので、邪魔で邪魔でなかなか近寄れません。

んなわけで、a の炭素にグリニャール試薬が攻撃を仕掛け、電子対が図の矢印のように移動し、
1,1-ジメチルエチレンオキシドは開環し、酸性水溶液で処理すると、第三級アルコールになりましたっと。

高校化学では第三級アルコールの製法は出てきませんからね!

なかなか面白い反応ではないでしょうか。


さて、この問題は構造式で答えるよう指示が出ています。

間違えて示性式で答えないように!



問6 ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応の考察1 (易)
問7 ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応の考察2 (易)


この2問は一緒に考えていきましょう。

図7と図8を交互に見比べながら解いていきます。

もう原理ではなく、結果だけ見て解いていけるので、パズルチックな問題となっていますね。


なお、図7と図8のニッケル錯体は、省略形でお送りいたします(爆)

図8の一番上から見ていきます。

↓の図では、右側が図8、左側がそれに対応する図7の箇所となっています。

ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応その1

交換してますねー

では、つぎー

ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応その2

ニッケル錯体を略しちゃったので、全く同じになっちゃいました(爆)

Ph- はフェニル基(C6H5-)です。

つぎー、サイクリックなぶぶんのみぎがわいってみよー

ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応その3

うんうん、ではつぎーひだりがわー

ニッケル錯体を触媒として用いたカップリング反応その4

というわけでしたー。



問8 ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成 (やや難)

ポリマーを作るには、当然のことながら、付加なら付加が、縮合なら縮合が、
何度も何度も繰り返し起こってくれないといけません。

となると、注目すべき点は、やはり図8の↓の部分でしょう。

ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その1 

生成物(オレンジ色)において、めでたくカップリングすることに成功した炭化水素基(水色、ピンク色)は、
黄緑色の出発物質由来のものです。

ただし、水色の炭化水素基に関しては、ピンク色が半周分しか回ってないのに対し、

ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その2

一周分くるくるくると回らないといけないわけですが。


ここで直感的に、なぜか出発物質が2ヶ所に存在するじゃん?
ということに注目して、しげしげと眺めているうちに、

むむむ、Br-C6H4-MgBr か? なんてひらめいちゃうかもしれませんが、
ここでは地道に求めてみましょうかね。


さてさて、ポリマーを作るわけですから、
一度はゴールしたオレンジ色の生成物が、上の図では黄緑色のスタート地点にもう一度立たないといけません

しかしそのためには、オレンジ色の生成物に、-Br か -MgBr の基が必要です!

そのためには、図において、水色の部分かピンク色の部分にそれが含まれていないといけないわけで。


一方、問題文には、「最も単純な」グリニャール試薬を示せ、という形容詞が付いてます。

さらに、グリニャール試薬以外に(↓の図の左側の出発物質にあたる)試薬を別に使っていいのか書いてありません。
これは困ったな。

しかし、これには深い理由があったのであった……。

ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その2


てなわけで、まあできるだけ単純そうな方から探っていくのが手でしょうか。

まず、グリニャール試薬には、炭素原子君が必要であり、
かつ目的物のポリアレーンにはベンゼン環にしか炭素君がいないことから、グリニャール試薬として

C6H5-MgBr

が考えられますね。

ですが、それだと、一巡目?の生成物(オレンジ色)として、

"水色部分-C6H5"

が得られちゃいます。これは、目的物

"Br-(C6H4)-Br"

のはじっこのBrがないことになっちゃいますね! ボツです!

あ、ちなみにここでは分かりやすさ重視のために、ベンゼン環をあえてPhで表しますが、これは


ははーん、となると、Br がついてればいいんだな、というわけで、

"水色部分-C6H4-Br"

が得られればいい!

するとグリニャール試薬は

Br-C6H4-MgBr

であれば万事解決、ですね!

水色部分は後に繋がるようにテキトーに埋め合わせればOK

だって、グリニャール試薬以外に試薬を別に使っていいのか言及されてないんだもん。

(完)


しかし、このグリニャール試薬には、すごい秘密があった……っっ!


ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その2

なんと左側の出発物質としても利用できる……っ!!



そんなわけで、Br-Ph-MgBr が鎖を伸ばしていく様子を、図8の一番上から見ていきましょう。

黄緑色で囲った分子は、すべてBr-C6H4-MgBr です。


ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その3

↑サイクリックな部分を一周したところまで。

生成物として、Br-C6H4-C6H4-MgBr、が得られた。


これをサイクリックな部分の右側の投入口に入れてみる。(緑色)
左側の投入口からは、Br-C6H4-MgBr を入れる。(黄緑色)


ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その4

すると、また一つベンゼン環が増えて、Br-C6H4-C6H4-C6H4-MgBr となった。


今度は、このBr-C6H4-C6H4-C6H4-MgBr (抹茶色)を左側の投入口から入れてみる。
右側からはBr-C6H4-MgBr を投入した。

ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その5

↑ここまでで半周


ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その6

↑一周しました。左側から投入した分子をカップリングに使うにはもう一周!


ここで右側から、BrMg-C6H4-C6H4-Br (緑色)を入れてみる。

ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その7

↑鎖が伸びてきたなぁ。


ニッケル錯体を触媒として用いたポリアレーンの合成その8

↑じゃーん! Br-C6H4-C6H4-C6H4-C6H4-C6H4-MgBr が生成されました!


これを繰り返していけば、鎖はどんどん伸びていきますね!


話を元に戻して……、
Br-C6H4-MgBr よりも単純なグリニャール試薬は考えられませんので、答えはこれに絞られますね、一応。


んー、そして残る問題は停止反応なのですが、
これは左側からブロモベンゼンを新しくぶち込めば目的物が得られるのではないでしょうかね。




Top
「挑戦!化学グランプリ!(一次選考・筆記)」 Top Page へ

 






Home

Λ 一番上に戻る Λ