Location: Home > 挑戦!化学グランプリ! >  1次(筆記) >  ベルヌーイの定理 ['07-1-1c]



続いて、問7・問8に挑戦です!


 
  次に流れる流体の圧力を考えてみよう。上記の真空実験を行ったトリチェリは,翌1644 年にはトリチェリの定理を発表した。これは液体を入れた容器の側面に小さな穴をあけたとき,その小さな穴から流れ出る液体の速度を求める式である。実はトリチェリの定理はベルヌーイの定理から導くことができる。では,まずベルヌーイの定理について考えてみよう。ベルヌーイの定理は,管内に拘束された,密度が一定の流体における一種のエネルギー保存則である。いま,水平に置かれた管の内部を流体が定常的に流れているとする。管に沿って任意の2 点A,B をとり,それぞれの点での流速と圧力をv1, v2, P1, P2 とすると,以下の式(1)が成り立つ。


 

つまり,ある点での流速v が大きければその場所の圧力P が小さくなり,流体の単位体積あたり
の運動エネルギーと圧力の和は変わらない。これをベルヌーイの定理という。
 
 
問7 ベルヌーイの定理を応用して以下の実験を考えた。下記の文の1)〜3)の(  )欄のア,イのうち,正しい記述を選び,記号で答えなさい。

  図4 のように同じ大きさ・厚さの2 冊の本を平行に水平な台上に置き,その上に自在に曲がる薄い紙を置く。そして片側からそれらの2 冊の本の隙間へ空気を吹き込む。ただし,空気の吹き込み方は充分に穏やかであり,空気は2 冊の本と置かれた紙と台の隙間へ正確に吹き込まれており,また吹き込まれた空気がこの紙の上を通ったり,吹き込まれた空気で薄い紙が直接動いたりめくれたりすることはないものとする。また,空気の密度が場所によって変わることもないものとする。



 

  このときの空気の流れは,図5 のようにモデル化して考えることができる。


 

  図5 のようなモデル化された空気の流れを考えるとき,B 部分(2 冊の本の間の隙間)での流速は,A 部分(隙間よりも手前の部分)でのそれと比較して 1)(ア:大きい/イ:小さい)。このため,B 部分での空気の圧力は,A 部分でのそれよりも 2)(ア:高い/イ:低い)。結果として,本の上に置かれた薄い紙は,吹き込まれた空気が2 冊の本の隙間を通過しているときには 3)(ア:上方へふくらむ/イ:下方へくぼむ)。
 


問7 B部分はA部分と比べて狭くなっているので、必然的に流速は大きくなります。(∴1>

そのため、ベルヌーイの定理より、



となるので、B部分での空気の圧力は、A部分のそれよるも低くなります。(∴2>

しかしながら、圧力が低くなるのは、あくまでも薄い紙の下側であって、
上側からは依然として大気圧がかかるので、結果として、下方へくぼみます。(∴3>

無限にくぼみ続けるのかというと、そういうことはなく、
そのうち、紙がもとの形に戻ろうとする力(弾性力)とつりあう(下図)ので、
下方へくぼんだ状態で静止します。




いよいよ最後の問題です!

 

  また,流路が水平でないときには,流体の体積あたりの位置エネルギーを考慮し,ベルヌーイの定理は下記の式(2)に変形される。



 

ただし,h1,h2 はそれぞれの地点A,B の高さである。また,g は重力加速度である。この式を応用して次の問題を考えよう。
 


問8 図6 に示すように,容器の側面に小さな穴をあけて細くて短い吐出管を水平に取りつけ,水を噴き出させた。ベルヌーイの定理をこの状況へ適用し,吐出管の出口から噴き出す水の速さv (m s-1)を重力加速度g (m s-2)と水面からの深さh (m)を用いて表しなさい(ここでは,重力加速度はg のままでよい)。なお,以下の@,Aの仮定を用いること。

@容器の断面積と比較して吐出管の断面積は圧倒的に小さい。この結果,水が噴き出る速さv (m s-1)と比較して,水面が降下する速さは無視でき,0 m s-1 としてよい。

A水面での水の圧力P1 (Pa)と吐出管出口での水の圧力P2 (Pa)はともに大気圧と等しいと考える。



 

 


問8 (2)式に代入し、水面が降下する速さを0 m s-1 として近似すると、



となります。ここで、大気圧をP(Pa)とおき、P1≒P2≒Pと近似すると、



となり、 v=(2gh)1/2 と求まりました!

ルートがヘタクソでスミマセン…(汗)。


以上が2007年度の【1】でした。理論化学分野の問題は、物理の分野が絡まることも多いので、
物理が苦手な人は、ぜひ物理の勉強もしてみてください。

でも、物理化学はもっと物理的要素が強い気が…? 



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