次に流れる流体の圧力を考えてみよう。上記の真空実験を行ったトリチェリは,翌1644
年にはトリチェリの定理を発表した。これは液体を入れた容器の側面に小さな穴をあけたとき,その小さな穴から流れ出る液体の速度を求める式である。実はトリチェリの定理はベルヌーイの定理から導くことができる。では,まずベルヌーイの定理について考えてみよう。ベルヌーイの定理は,管内に拘束された,密度が一定の流体における一種のエネルギー保存則である。いま,水平に置かれた管の内部を流体が定常的に流れているとする。管に沿って任意の2
点A,B をとり,それぞれの点での流速と圧力をv1, v2, P1,
P2 とすると,以下の式(1)が成り立つ。 |

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つまり,ある点での流速v が大きければその場所の圧力P
が小さくなり,流体の単位体積あたり
の運動エネルギーと圧力の和は変わらない。これをベルヌーイの定理という。
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問7 ベルヌーイの定理を応用して以下の実験を考えた。下記の文の1)〜3)の( )欄のア,イのうち,正しい記述を選び,記号で答えなさい。
図4 のように同じ大きさ・厚さの2 冊の本を平行に水平な台上に置き,その上に自在に曲がる薄い紙を置く。そして片側からそれらの2
冊の本の隙間へ空気を吹き込む。ただし,空気の吹き込み方は充分に穏やかであり,空気は2
冊の本と置かれた紙と台の隙間へ正確に吹き込まれており,また吹き込まれた空気がこの紙の上を通ったり,吹き込まれた空気で薄い紙が直接動いたりめくれたりすることはないものとする。また,空気の密度が場所によって変わることもないものとする。 |

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このときの空気の流れは,図5 のようにモデル化して考えることができる。 |

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図5 のようなモデル化された空気の流れを考えるとき,B 部分(2 冊の本の間の隙間)での流速は,A
部分(隙間よりも手前の部分)でのそれと比較して 1)(ア:大きい/イ:小さい)。このため,B 部分での空気の圧力は,A
部分でのそれよりも 2)(ア:高い/イ:低い)。結果として,本の上に置かれた薄い紙は,吹き込まれた空気が2
冊の本の隙間を通過しているときには 3)(ア:上方へふくらむ/イ:下方へくぼむ)。 |