Location: Home > 挑戦!化学グランプリ! >  1次(筆記) > アルドール反応 ['07-1-2c]



だんだん難しくなってきますよ。

「求核剤」や「求電子剤」の意味は理解しましたね?

 

 
  これまで見てきた反応では炭素とそれ以外の元素との結合をつくる反応であったが,有機合成化学において,炭素―炭素結合をつくる反応は極めて重要である。なぜなら有機化合物の骨格の大部分は炭素−炭素結合からできているからである。炭素―炭素結合をつくる有用な反応にアルドール反応がある。アルドール反応では,エノラートイオンが重要な働きをしており,ヨードホルム反応のときと同様,炭素アニオンとして反応する。またアルドール反応は,上述のエタノールの酸触媒によるジエチルエーテル生成の反応に形式が似ており,用いたカルボニル化合物のうち1分子が求核剤となり,もう1分子が求電子剤として働く二量化反応である。
  
 
問5 アセトアルデヒドに低温(5℃)で少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応させたところ,分子式がC4H8O2で表される化合物A が得られた(この反応がアルドール反応である)。一方,高温(60℃)で反応を行ったところ,分子式がC4H6Oで表される化合物Bが得られた。化合物AおよびBを構造式で描きなさい。なお,化合物Bは化合物Aがさらに反応して生成したものである。また,立体異性体については考えなくてよい。 
 
 


問5 求める化合物を整理しておきましょう。




「アルドール反応」は、問題文より、
エノラートイオンが重要な働きをしており,炭素アニオンとして反応。
用いたカルボニル化合物のうち1分子が求核剤となり,もう1分子が求電子剤として働く二量化反応」

ということなので、まずは、エノラートイオンを頑張って作りましょう。
そのためには、何か求核剤が必要です。

ここで、もう一度問題に目を通すと、おっと水酸化ナトリウムがあるじゃないか!

というわけで、水酸化物イオンがアセトアルデヒドに攻撃をしかけるわけですが、
一体どこに攻撃するんでしょう?

迷っても混乱しないことです! 物理攻撃を受ければ混乱が治るなんて思ってたら大間違いです!
化学は魔法攻撃なんですからねっ!

ここで、図7 をもう一度見てみましょう。
水酸化物イオンは、カルボニル基の隣(α位)の炭素にくっついた水素に攻撃していますね!
スクエニ最高!
 



というわけで、水酸化物イオンは、アセトアルデヒドへに以下のように攻撃します。




そして、生じたエノラートイオンには共鳴形が存在するわけですね。




↓参考(図8)



じゃあ、共鳴形のうち、どちらが反応に関わるのか、ですが、

エノラートイオンが重要な働きをしており,炭素アニオンとして反応。
用いたカルボニル化合物のうち1分子が求核剤となり,もう1分子が求電子剤として働く二量化反応」

ですから、炭素アニオンである右側がアルドール反応に関わっていることが分かりますね。

というか、C-C結合を作りたいんだから、炭素アニオンにするのも当然かな、という気もします。


さて、アニオンはその言葉の通り、求核剤として働きます。
では、求電子剤は何でしょう?

そう、アセトアルデヒドですね。

「用いたカルボニル化合物(=アセトアルデヒド)のうち1分子(=エノラートイオン)が求核剤となり,
もう1分子が求電子剤として働く二量化反応」

ですから、以下のように反応するわけです。

                                 ↓イコール



あとは、酸素原子上の負電荷に、水からプロトンが供与されます。
逆にいえば、水からプロトンを奪い取ります。




なんかずいぶんと斜めな画像です…(汗)
どうも傾きながら原稿を書いていたようですね…(汗)

というわけで、化合物Aの構造式は上の通りです。

ちなみに、水酸化物イオンが最後に再生しているので、
水酸化ナトリウムは、この反応において触媒として働いていたことが分かりますね。



長かった!
さて、次は化合物Bです。



分子式から判断するに、脱水していることが明白です。

では、Aのどこから水(H-OH)がとれるのか、というと、
あからさまに -OH が存在していますので、
ここが脱離するものと考えて話を進めていきましょう。

では、H は左と右のどちら側からとれるのでしょう?

よくよく分子を見てみると、右側の水素は、カルボニル基の影響で求電子的になっていることが分かります。
(分からなかった場合は、もう一度戻って読みなおしてみてください)

そのため、右側の水素が引き抜かれる反応が起こることが見えてきますね。

求核剤は何かというと、水酸化物イオンですね。


反応自体は、すべて今までの復習です。



求電子的なα位の水素に水酸化物イオンが攻撃し、共鳴形をもつエノラートイオンが生成します。


炭素アニオンに対して求電子剤が攻撃すれば、Aと同じような反応になるのですが、
今回の目的は脱水なので、-OH を追い出す反応を考えます。

では、-OH は OH として追い出されるのでしょうか。
いえ、違います。フツウは OH- として追い出されますよね。

というわけで、下図において -OH の下にあるC-O結合から電子対を調達して、
炭素アニオン上の電子対を左に移せば完璧ですね。
ちょっとしたパズルです。



なんかまた斜めになってるし…(泣)

今回もOH- が再生しているので、水酸化ナトリウムが触媒として働いていたことが分かりますね。


<別解>

脱離反応と聞くと、真っ先に思い浮かべてしまうのが、そう、Zaitsev則(Saytzeff 則)ですね。
日本語では、ザイツェフ則、ザイチェフ則、セイチェフ則といった名前で呼ばれています。
単なる発音の問題ですね。

どの発音が一番正しいか知りたいなら、ぜひロシアに行ってみてください。

さて、この法則ですが、高校段階で習うとすると、おそらく

「脱離基の結合した炭素原子の両隣りの炭素原子のうち、
水素原子の数の少ない方から水素原子が失われた化合物が主生成物となる」

と習ったものと思います。少なくとも私はそう習いました。先学期ぐらいに。


しかし、この覚え方では、大学入試ぐらいまでなら対応できるでしょうが、応用がききません。
覚えなおしましょう。すなわち、

「脱離反応は、通常、より多く置換されたアルケンを主生成物として与える


たとえば、ブタ-2-オール の脱水反応では、ブタ-1-エン と ブタ-2-エンの生成が考えられます。
(たとえば、 2-ブタノール   の脱水反応では、 1-ブテン  と  2-ブテン の生成が考えられます。)

下の書き方はふるーいふるーい呼び名です。確か、1993年以前の呼び名です。
しかし、未だに教科書なんかでも、下の呼び名の方が多いので、
不本意ながら、このページは下の呼び名で統一したいと思います。

別のページは違うかもしれませんがね。

さて、ザイツェフ則に関しては、きっと『有機化学の部屋』の方で課長さんが解説してくれると思いますので、そちらを待ちましょう。
(単に、めんどくさがりなだけの部長であった)


そういうわけで、ザイツェフ則を用いて解くと、途中の反応は無視していきなり答えを導くことも可能といえば可能です。



より多く置換されたアルケンであり、かつカルボニル基からのπ電子の流れ込みによっても安定した上の分子が答えとなります。



かなり一問一問が重くなってきました!

問6につづく。

 


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