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一般に水と油は互いに溶け合うことはないため,両者を混合すると二層に分離するのが観察される。ここに,セッケン液を入れて振ると,今まであった明確な境界線はなくなり,あたかも水と油が溶けあったかのような状態となる。このように,水と油の界面に作用する溶質のことを界面活性剤といい,洗浄などの分野でよく用いられる。
界面活性剤としてはたらくイオンや分子には,疎水性(油に対して親和性を持つ)の部分と,親水性(水に対して親和性をもつ)の部分がある。界面活性剤の代表的なものに,ドデシル硫酸ナトリウムCH3−(CH2)11−OSO3−
Na+がある。ドデシル硫酸ナトリウムは,水に溶解すると電離し,親水性の官能基が陰イオンに電離するため,アニオン性界面活性剤(アニオンとは陰イオンのことを指す)とよばれる。ここでは,ドデシル硫酸イオンを以下のように略記する。
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ドデシル硫酸ナトリウム水溶液では,ドデシル硫酸イオンは親水性部分を水側に,疎水性部分を空気側に向けてその界面に集まることが知られている。その濃度を高めていくと,界面がドデシル硫酸イオンによって覆われた,単分子層という層が形成される。一方,溶液の内部では,イオンどうしが集まってミセルとよばれる集合体を作りはじめる。ミセルが急激に増加すると考えられる濃度を臨界ミセル濃度といい,これを境として溶液の性質が大きく変わる。
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実験により,ドデシル硫酸ナトリウム水溶液の抵抗を測定し,臨界ミセル濃度を求めた。
操作1
濃度の分かっている数種類のドデシル硫酸ナトリウム水溶液を調製した。
操作2 以下の図2
のような回路を構成した。交流電源に接続し,ドデシル硫酸ナトリウム溶液中の
電極間に電圧をかけて微弱な電流を流した。可変抵抗器を動かし,検流計の針が触れない位
置を探し,そのときの電気抵抗
R1,R2
[Ω]を記録した。水溶液の電気抵抗をRX
[Ω]とすると,
R1 ×
RX = R2 × R3
の関係があることを利用し,RX を求めた。なお,この操作における可
変抵抗器とは,電気抵抗(R1+R2 )の値を一定に保ちつつR1,R2
を変えることのできる装置で
ある。ここでは,電気抵抗R3 =
111Ωで固定されている。
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問1 この実験を行ったところ,以下の表1 のデータが得られた。
(1)
横軸に界面活性剤濃度 [mol L-1
],縦軸に電気抵抗RX の逆数 [Ω-1 ]をとり,グラフを描きな
さい。
(2)
臨界ミセル濃度の前後で,RX の変化の傾向に違いがみられる。グラフから,臨界ミセル濃度
[mol
L-1 ]を求めなさい。
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