Location: Home > 挑戦!化学グランプリ! >  1次(筆記) > 逆性セッケンは逆に魅せる ['07-1-3c]



続いて、Cパートにチャレンジです!

 
[C]
  界面活性剤には,水に溶解したとき電離して,親水基が陽イオンになるカチオン性界面活性剤(カチオンとは陽イオンのことを指す)もある。セッケンや合成洗剤とは逆の電荷を帯びているため,逆性セッケンとよばれることもある。
  その代表的なものに,塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム CH3−(CH2)17−N+ (CH3)Cl-
がある。
  ここで,ガラス表面にカチオン性界面活性剤(の陽イオカチオン性界面活性剤(の陽イオンン)がどのように配列するか考えてみよう。ガラスの表面には−OH 部位と−ONa 部位が存在する。このガラスを酸性水溶液に浸したときには

@に示す化学平衡が右に移動し,ナトリウムイオンの一部が水素イオンに交換される。
  一方,塩基性水溶液に浸したときには,

Aに示す化学平衡が右に移動する。


問8 空欄Aの可逆反応について,その化学反応式を@のように答えなさい。
問9 トリメチルオクタデシルアンモニウムイオンを  のように略記する。
                                疎水性    親水性

ガラス表面にトリメチルオクタデシルアンモニウムイオンはどのように配列していると考えられるか。最も適切なものを(A)〜(C)より選び,記号で答えなさい。




問題文より、「ガラスの表面には−OH 部位と−ONa 部位が存在する」ので、

−SiOH + OH-   −SiO- + H2O  ・・・A

−SiONa + OH-   −SiO- + NaOH  ・・・B

が考えられるので、答えは2つ! ではありませんね。

そもそも、−SiONa の O-Na間の結合は、共有結合ではなく、イオン結合ですから、
詳しく書くと、−SiO- Na+ となります。

NaOH は Na+ と OH- の塩ですから、B式は

−SiO- + Na+ + OH-   −SiO- + Na+ + OH-

となり、両辺から Na+ と OH- を消すと、

−SiO-   −SiO-

となってしまうので、不正解です。


というわけで、
−SiOH + OH-  −SiO- + H2O  ・・・A
が答えとなります。



続いて、問9です。

トリメチルオクタデシルアンモニウムイオンは、問題文より、
「親水基が陽イオンになる」「カチオン性界面活性剤の陽イオン」です。

ここで、ガラス表面に水がついた場合を考えると、

@+A  −SiONa + −SiOH + H+ + OH-  SiOH + −SiO- + Na+ + H2O 
          −SiONa + −SiOH + H2O  SiOH + −SiO- + Na+ + H2O

両辺から、−SiOH と H2O を消すと、

−SiONa  −SiO- + Na+

という、実は単なる電離の式が得られます。

つまり、ガラスの表面は、−SiO- によってマイナスに帯電していることが分かります。

界面活性剤の親水基はプラスに帯電しているので、

 答えは、(A)
になります。


このことから、ガラスの表面にカチオン性界面活性剤が配列すると、
ガラスの表面は疎水性になると考えられます。


ところで、問9の大ヒントが実は、次の問題文中に書いてあるんですね。
青字の部分です。というか、答えそのものですね、これは。


 

  ところで,シャーレに水をはり,ヨウ素・ヨウ化カリウムを微量溶解させたニトロベンゼンの油滴をシャーレに静かに滴下する。シャーレの中に,塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム水溶液を加えると,油滴が水中で動き回る現象が知られている(図4)。



図4 油滴の運動の実験装置(上)と運動の様子(下)

  このとき,油滴とガラスの界面では何が起きているのか考えてみる。まず,ガラスの表面が負の電荷を持つため,界面活性剤(の陽イオン)がガラス表面に集合しガラスの表面を(  ア  )性にする。ここへ,油滴が通ると,油滴中のヨウ素のイオン(主にI3-)とガラス表面に配列した界面活性剤がひきつけあってミセルをつくり油滴内部に取り込まれる。このため,ガラス表面は,油滴がくる前は( ア )性であるのに,油滴の通った後では(  イ  )性になる。このことが,油滴が運動する理由の一つと考えられている。


問10 文中の空欄ア,イにそれぞれ親水あるいは疎水の語を入れて,文意が通るようにしなさい。

問11 下線部について。このとき油滴内部において,ヨウ素のイオンと界面活性剤はどのようなミセルを形成するか,その断面図として最も適切なものを(A)〜(C)より選び,記号で答えなさい。なお,球状のミセルの内部にヨウ素のイオンが存在するが,以下の図では省略して描いている。




問10 ( ア )は、問9の答えより明らかです。



上の図より、ガラス表面は疎水性になってますね。

( イ )は、文脈的に( ア )の反対が来るので親水性になる…、という消極的な解き方でもいいですが、
先に問11を解いて、後で考えてみましょう。


問11はヨウ素のイオン(主にI3-)に注目です! マイナスに帯電していますね!

界面活性剤の親水基はプラスに帯電しており、

球状のミセルの内部にヨウ素のイオンが存在する」と問題にあるので、

答えは、(B)になります。

このため、ミセルの外側は疎水性になり、油滴内部に取り込まれます。

普通のミセルの逆になるので、これは逆ミセルと呼ばれます。


<別解>

問題の本文中より、「……ミセルをつくり油滴内部に取り込まれる

さらに、問11の文章中より、「油滴内部において,ヨウ素のイオンと界面活性剤はどのようなミセルを形成するか、……」

とあるので、ミセルの外側は油。ということは、ミセルの外側は必ず疎水性になるはず。ゆえに、B


さて、界面活性剤が逆ミセルを形成した結果、ガラスの表面には −SiO- が残り、親水性を示すことになります。

すると、油が、親水性となったガラス表面から逃げて行き、油滴が運動するわけですね。



以上が2007年度の【3】でした。無機化学の問題は、有機化学の分野を絡めて出題されることも多いので、
有機化学の知識も必要になってきますね。



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